Research topics
- 原子層物質とは層状物質の一種で、層間が弱いファンデルワールス力で結合しているため テープを用いて剥ぐことで比較的簡便に単原子層薄膜を得ることができます。 単原子及び数原子層物質はその2次元性から3次元物質とは全く異なる物性を示すことに加え、 複数の原子層物質を積み重ねることで膨大な組み合わせのヘテロ構造を考えることが可能であり、 3次元結晶とは桁違いの新奇物性の可能性を秘めています。
- 私たちは原子層物質のデバイスやヘテロ構造を作製し、電気伝導測定と光学測定を用いて新しい物理現象を探索しています。
以下に最近の研究内容の例を挙げますが、これら以外にも世界でまだ誰も見たことのない
新現象がたくさんあるはずです。我々と一緒にそのような新奇物性や面白い機能性を探索
してくれる方、物質科学の新しい潮流に興味のある方の参加をお待ちしています。
研究室見学・質問はいつでも歓迎です!
原子層物質の対称性と量子自由度を自在に制御して
新奇物性を開拓する
量子状態を輸送特性から明らかにする
原子層物質の物性を測るためによく測定されるのが輸送特性です。電子などのキャリアがどのように振る舞っているのか、というのはバルクでも2次元物質でも 変わらず重要なことです。
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量子ホール効果
原子層物質はその極限的な薄さを活かして、様々な物性研究のプラットフォームとして使われています。
量子ホール効果はその一例として非常に有名で、グラフェンのような二次元の電子系に対して磁場を印可することで 量子化されたホール抵抗(量子ホール効果)を観測することができます。
このような低次元性を活かした物性の開拓も重要な領域です。 -
トンネル磁気抵抗効果
トンネル磁気抵抗効果(TMR)は、2枚の強磁性体を極薄い絶縁膜で挟んだ構造で、電子の“量子トンネル”が磁化の向きに依存して起こる現象です。 磁化が平行だと抵抗は小さく、反平行だと抵抗は大きくなり、その差(TMR比)が信号になります。 原子層物質でこの現象を利用すると、磁性を反映した信号を得ることができ、内部の磁気秩序を電気信号から明らかにすることができます。
光を活かした測定の数々
輸送特性と対をなす、もう1つの重要な測定が光学測定です。井手上研では独自の光学系を所有しており、 様々な測定が低温(10 K以下)、磁場下(5 T以上)で可能です。
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ラマン分光法
結晶を構成する物質の組成などを判定するのによく使われるのがラマン分光法という手法です。
ラマン分光法で得られるデータは結晶の組成だけでなく、様々な構造相転移や磁気相転移といった相転移によっても変化し、 光物性の研究においてなくてはならない存在となっています。 -
第二次高調波発生(SHG)
第二次高調波発生(SHG)もまた重要な測定の1つです。SHGでは物質の対称性に応じた信号を取得することが可能で、 この「対称性」は物性研究において非常に重要なキーワードとなっています。
原子レベルに薄い物質の様々な物理量を測定する
薄くて微細な原子層物質の量子状態・物性を測定することは一般には困難であり、
デバイス構造や測定系を工夫して新たな測定手法を開拓していく必要があります。
井手上研では物性研究所で利用可能な電子ビームリソグラフィ(EBL)やスパッタリング、エッチングといった
微細加工技術や、マイクロ波測定技術を活用して新たな測定手法を考案・研究しています。
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磁性体のスピン共鳴
マイクロ波スピン共鳴などにより数原子層という極限の薄さにおけるスピンダイナミクスを測定する手法の開発を考案・研究しています。
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超伝導体の慣性インダクタンス
ゼロ抵抗になってしまう超伝導状態において、抵抗測定に代わりその物質の状態を知るために有用なのがインダクタンス測定です。
井手上研では超伝導マイクロ波共振器などを利用した慣性インダクタンス測定と、それによる原子層超伝導体の測定を研究しています。